亀次郎の予備試験記録部屋

令和元年(2019年)の予備試験の受験記録、再現答案、勉強方法についての備忘録

令和元年(2019年) 予備試験 行政法 再現答案

行政法

 

第1設問1

 原告適格は、取消の対象となる処分について「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法(以下法)91項)について認められる。そして、法律上の利益を有する者とは、当該処分によってその権利や法律上保護された利益が侵害され、又は必然的に侵害される恐れのある者をいう。さらに、当該処分を定めた根拠法規が不特定多数人の具体的利益を専ら一般の公益に吸収・解消するにとどめず、その帰属する個々人の個別的利益としても保護する趣旨と解される場合には、このような利益も法律上保護された利益にあたると解される。そして、その判断は法92項による。

 本件では、Cは本件広告物によって住宅地である周辺地の景観を害されない利益、明るすぎる照明によって睡眠を害されないという生活の平穏の利益を主張する。

 これに対して、A県は、こうした利益は一般の公益に吸収解消される性質の利益であるから、「法律上の利益」にあたらないと反論し得る。

 では、上記Cの①②の利益は「法律上の利益」か。

 この点、本件処分の根拠法規である条例611号は都市計画区域内における広告物について知事の許可を必要とすると定めるところ、許可について基準を定めた規則101項、別表第4は「良好な景観」の形成を阻害するものを認めない旨定めている。また、本件条例の目的規定である1条は「良好な景観」の形成をその目的に掲げており、さらに、広告のあり方を定める2条も「良好な景観」を保護すべきことを定めている。

 さらに、本件広告物が許可されて設置されるに至った場合、その電光による景観を害する程度は、本件広告物に近ければ近いほど大きくなるものである。

 以上を総合すれば、法は、許可の対象となる広告物の近隣に住む者について、その景観を害されない利益をその個別的利益として保護する趣旨であると解すべきである。

 本件では、Cは、本件広告物の設置が申請された本件申請地の隣地に住んでいる者であるから、Cのの利益は「法律上の利益」にあたる。

 一方の利益については、生活の平穏を保護する趣旨の規定は、根拠法規の中にもその目的規定の中にも見受けることはできず、A県反論のとおり、一般公益の中に解消されるものとして「法律上の利益」には当たらない。

 

2設問2

1 Bは基準1が条例の趣旨目的に反して、合理性を欠き無効であるから、これによってなされた本件不許可処分も無効であると主張したいものと考えられる。

 この点、条例を根拠として制定された基準1が不合理であるか否かは、その根拠となる条例の目的趣旨に照らしてその趣旨目的に反するものかによって判断すべきである。

 

2 基準1のうち、自己の事務所等に自己の名称等を表示する以外の広告物についてその他の広告と異なる規制を課している点について

(1)この点、基準1の根拠となる規則102項及び条例61項は広告物の規制において、一定の場所において、広告物を出すには、知事の許可を要するものと定めている。そして同条例の目的を定めた1条及び、広告物のあり方を定めた2条が、良好な景観の形成を妨げず、風致を維持し、公衆への危害の防止することを重ねて指摘しているという点に着目すれば、条例61項の趣旨目的は、良好な景観、風致、公衆の安全を害すると認められる広告物について許可をしないもとのすることにある。とすれば、このような害を生じる点では、自己の事務所等に自己の名称等を表示する広告物とそれ以外の広告物であっても同じであり、後者について、前者には課されない鉄道までの距離規制という特別な規制を課する基準1は、その根拠たる条例の趣旨目的に反し、不合理である。

 

3 基準1のうち、鉄道等までの距離は、100m(商業地域にあっては、20m)以上であることを定めた点について

(1)この点、基準1の根拠となる条例61項は、2号において、「鉄道」に「接続」し、かつ、「当該」「鉄道」から「展望できる地域」のうち知事が指定する区域について、広告物を設置する際には知事の許可を得ることを要すると定める。これは、鉄道から見える地域における良好な景観、公衆の安全を特に保護する趣旨である。とすれば、鉄道が地下にあり、電車内から広告を見通すことのできない場合には、この規制の目的趣旨が妥当しない。よって、鉄道が地下にある場合については、このような距離制限をする必要はなく、このような場合について、距離制限をしないことを定めていない基準1の部分は、上記条例の趣旨目的に反して不合理であることが明らかであるといえる。

 

以上