亀次郎の予備試験記録部屋

令和元年(2019年)の予備試験の受験記録、再現答案、勉強方法についての備忘録

2019 予備試験 現場での感覚 (民事系)

民事編

 

総論

 自分が明らかに失敗したことについて振り返り、記録し、これを公表するのは、決して楽しいものではない。 しかし、この不都合な事実をしっかりと見直すことが、過去を振り返って悶々としてしまう自分と決別して前に 進むために必要だと考えた。また、来年以降の受験生たちが自分の失敗から学び、安心して合格を勝ち取ってもらうことができれば、人の役に立てたという点で自分の心も少しは慰められる。

 試験現場で自分が何を考え、どう対応したのか。覚えているだけ記録しておきたい。

 

各論

問題文↓

http://www.moj.go.jp/content/001299739.pdf

 

スキャン時

(1) 民法

第一問、前段は Dの所有権の存否についてと、後段は借地借家法 10 条が Q になるのかなぁ。伊藤塾の直前模 試で聞かれた死亡前の贈与の相続人による撤回の論点も頭をかすめた。

第二問、時効取得を書かせたいのかな。なぜ 2 つの訴訟をわざわざ出しているのだろう。よくわからない。

(2) 商法 第一問、特別利害関係人にあたるか否かの検討と取締役会決議の要件の検討か、議題にない取締役会決議も脳裏をかすめたが、当然にできるだろうと流してしまった。

 ありうる論点はすべて拾うのが賢い選択である予備試験では、この選択は間違いだった。正しい判断ができなくなるというのは、疲れが出てきたことの表れだろう。

第二問は、106 条、譲渡制限株式の承認の論点、299 1項、議決権行使の Q。問題文の事情を使える論点がこれ以上思いつかない。

(3) 民訴法

第一問、訴訟係属時と当事者確定の原則を示す。124  1  1 号類推 or 選定当事者とか任意的訴訟担当の話か?

第二問、既判力の及ぶ範囲の原則論を示したうえで、趣旨、根拠からその拡張を主張する。それしか思いつかん。

 

ここまで 30 分くらい

 

答案構成時

(1)民法

第一問、要件事実的に当事者の主張を整理して問題点をあぶりだそうとする。177 条の Q なのか、94  2 類推の Q なのか。基本論点ながら迷う。そして、問題文の事情をより多く使えるのは後者だ!と思い、94  2 項類推で行くことを決断。

第二問、からの 94  2 項類推による所有権取得の抗弁に対して、短期時効取得の再抗弁なのか。自己物の 時効取得とかも問題になるかな。

(2)商法

 第一問、第二問、スキャン時に拾った論点に必要な条文を調べ、書き出す。

(3)民訴法 第一問、問題文の「任せる」「任された」の事情を使うには任意的訴訟担当に引っ張り込むしかないと考えた。

この訴訟が固有必要的共同訴訟であれ、通常共同訴訟であれ、X2  X1 からその訴訟追行を委任されていたとい えれば、たとえ訴訟係属時に X1 が死亡していても、X1の死亡は当該訴訟に影響はないのではないかと考えたのだった。商法と同じく、論点となりえる訴訟形態の確認も一応しておくべきだっただろう。

第二問、売買契約に基づく所有権移転登記請求権が訴訟物になるときって、既判力の客観的範囲は売買契約の 成否にも及ぶんだっけ?思い出せなかった。でも、問題文の事情はなるべく使うというポリシーに従えば、売買 契約の成否が前訴の唯一の争点であったことは、客観的範囲について前訴の既判力の拡張を肯定する要素になるから、この事情を使えるように、あえて原則既判力は契約の成否には及ばないことにしておこう。

 

ここまで、時間 40 分くらいかかってしまった。

 

答案作成時

(1)民訴から始める。 

正直、ここでもう少し焦って書いていれば、民法を書ききれたかもしれない。民訴は短くても評価がつきやす

いというのに、まさかの 4 ページ目中段まで書く。

 (2)商法に移る

問題文の事情があまり使えないー、つらい。と思いながら、結局だらだらと 4 ページ目上段まで書いたと思う。

(3)民法

時計を見ると、残り時間 30 分。

民法の答案用紙はまだ真っ白。

ふぅ。

書けて 3 枚だなぁと途中答案を覚悟する。

ここで、さらに困ったことに、果たしてこの答案構成は合っているのか疑問がわいてきた。さらに筆は遅くな る。しかし、どことなく、これまでの出来具合から、たとえ民事系で多少失敗してもダイジョブなんじゃないかという、試験中にあってはならない慢心が襲ってきた。

 頭はクラクラ、目はシバシバ、頭の中ではウルフルズの「それが答えだ!」が流れていた。

とりあえず、書けるところまで書くしかない。結果、民法は、枚目に入ったところでタイムアップ。第二問 は丸々白紙という大惨事になってしまった。これが試験後じわじわと自分の精神をむしばんでくることになる。

 

 3 反省と考察

 民事系でも、公法、刑事、そして実務科目と同じようにだいたいの解答時間感覚をつかんでいた(はずだった) 練習段階から、答案構成に 3 科目で 1 時間 30 分使ってもいいと考えていたが、最後に答案作成する科目が薄く なってしまうという問題点を抱えていた。

 ある程度体力のあるときに解いても最後の一科目がペラペラになってしまうのだから、本試験の最終日最終科 目に至って疲弊しきった状態では、どうなってしまうのかということを今回思い知らされた。

 

 練習段階では、厳格に 2 日間本試験と同様の時間割で解答を作成したのは伊藤塾の直前模試だけだった。直前模試は、そこでよい点数を取ることを目的として受けたわけではない。あくまで、予備校の予想論点を教えても らうためだけに受けていたようなものだった。だから、どこか気楽に受けていた。模試を受ける段階では、本番までまだ2週間あり、正直勉強が間に合っていない状態だったから仕方がない。直前に見直すべき復習ノートも未完成で、試験直前にこれを回転させることがどれだけ大変か、把握できなかった。

 本番では、試験当日は両日とも朝 5 時から当日の試験科目の復習ノートを全力集中して爆速復習しており、一日目は帰宅後も夜 11 時まで翌日の科目の復習をしていたので 2 日目の午後は頭がくらくらするくらいに疲れていた。

 こうした点を踏まえて、戦略的には、日目は朝のうちに民事系、実務科目の最終復習は終わらせてしまい、 2 日目の昼休みは 10 分でも昼寝して体力を回復させるべきであったと思う。

 たしかに、試験会場で昼寝するというのは精神的にも興奮状態にあるので、なかなか難しいかもしれない。しかし、目を閉じて深呼吸していれば気持ちは落ち着いてくる。また、長い試験のどこかでピットインしてメンテナンスをしないと、正しい判断能力を失い、自分のように重大な事故につながってしまう可能性がある。プロである裁判官ですら午後の案件の方が、午前のものより誤審しやすいという。

 アスリートは休息も仕事のうちというが、これは受験生・法曹実務家にも当てはまるだろう。

 自分は今回この試験に落ちていれば、もう二度とこの試験を受けることはない(現時点ではそのつもり)のでこの反省も意味がないかもしれない。しかし、自分のこのつらい経験をあえて公表することで、来年以降の受験生たちが、試験の合間にしっかり休息をとって、自分のような失敗をしないように注意して合格を勝ち取ってくれればうれしいと思う。