亀次郎の予備試験記録部屋

令和元年(2019年)の予備試験の受験記録、再現答案、勉強方法についての備忘録

令和元年(2019年) 予備試験 商法 再現答案

商法
 
第1設問1
まず、Dは、会社法(以下略)369条2項の「特別の利害関係を有する取締役」にあたらないから、Dを決議に参加させなかった本件取締役会決議は、369条2項1項に反して違法であると主張することが考えられる。
 この点、同条項の「特別の利害関係を有する取締役」とは、決議に関して取締役に課せられた善管注意義務(330条、民法633条、634条)に反する恐れを有する取締役をいうと解される。そして、取締役会において代表取締役を解任する決議をする際の当該代表取締役についてこれにあたるとするのが判例である。本件では、本件取締役会決議においては、その決議によってDが取締役から解任されるものでなく、Dの解任を目的とする臨時株主総会の開催を決定するものであるから、Dが解任される恐れはなお抽象的なものにとどまり、上記の恐れがあるとは言えない。よって、Dは特別利害関係人にあたらない。よって、CがDをこれにあたるとした点は、369条2項に違反する。
 とすれば当該取締役会決議で「議決に加わることができ」た取締役は、BCDEの4人であるのに、本件取締役会決議は、CEだけがその議決に参加してその議決権を行使しており、369条1項の「議決に加わることができる取締役」の「過半数」が「出席」するという要件を満たさない。よって、本件取締役会決議は369条1項にも反して違法である。
 よってDの主張は認められる。
 
第2設問2
1 本件株主総会決議は、Dを取締役から解任する決議を内容とするから339条1項、309条2項7号に基づき特別決議を必要とする。309条2項の特別決議では、「議決権行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席」することが必要である。甲社の発行済み株式の総数は200株であるから、101個以上の議決権を有する株主が出席する必要があるところ、本件株主総会で議決権の行使が許された株式はCDE合わせて60個に過ぎない。そこで、Dは、上記要件を満たさず違法であると主張することが考えられる。
 これに対して、甲社側は、Aが所有していた100株については、Aの死亡により、BCDEによる準共有となっており、106条の適用を受けるところ、同条は、原則として、株式を共有する者のうち行使する者を1人定めて、これを会社に通知しなければ、「権利を行使できない」とする。そして、本件では、こうした行使者の特定も会社への通知もないから、当該100株については、「行使できる株主の議決権に含めない」のであるから、本件株主総会決議は適法であると反論する。
 この点、会社が一方では共有に係る株式について権利行使を認めつつ、他方ではこれを認めないという信義に反する取り扱いをする場合については、権利行使が許されると解されるところ、本件ではこのような事情もない。よって、反論は認められ、Dの主張は認められない。
 
2 Dは、丙社への株主名義書換えを拒絶したことが不当拒絶にあたり、丙社は甲社に対しても、その株主としての地位を対抗できるから、丙社に対して本件株主総会の招集通知をしなかったこと、また、Dに丙社の有する40株の行使を認めなかったことは、違法であると主張することが考えられる。
 この点、丙社は、乙社から取得した甲社株式について、甲社に対して株主名簿の名義書換請求をしているが、これは、137条1項の承認を求めるものといえる。そして、甲社のような取締役会設置会社(2条7号)においては、承認するかしないかの決定は取締役会の決議によらなくてはならない(139条1項)。しかし、本件では、Cが単独でこれを拒絶しており、139条1項に反する。また、145条1号は137条1項の請求から2週間以内に139条2項の通知をしないときは、会社は株式の譲渡を承認したものとみなされる旨定めているところ、請求自体は平成31年4月22日にしているから、遅くとも、令和元年5月10日の本件株主総会の招集通知を発送する時点において、丙社は甲社の株主としての地位を対抗できるにいたっている。よって、株主に対して招集通知を欠き、299条1項違反の違法があり、株主に対してその議決権の行使を認めなかった点にも違法がある。
以上